航空機の操縦性(PIO)
PIO: Pilot Induced Oscillationについて
航空機の操縦系統と操縦者の相関により意図せず励起される振動現象のこと。
最初の航空機であるライトフライヤーから、最新の戦闘機(X-36)でも発生している事象で最悪の場合墜落に至る。
名称から操縦者に原因があるような印象を受けるが、原因は機体側(操縦系統)にある。
PIOの発生要因によって以下の4種類に分類される。
CAT.Ⅰ Linear Pilot-Vehicle System oscillation
最も単純で避け易いPIO。設計段階で対処されるため、実運用ではめったに発生しない。 (発生例: A-6 Intruder攻撃機)
CAT.Ⅱ Quasi-Linear events with nonlinear contributions
アクチュエータのレートリミット/オーソリティリミット等の非線系要素+線形要素で引き起こされるPIO。(発生例 : Space Shuttle / JAS-39 Grippen)
CAT.Ⅲ Nonlinear PIOs with transients
制御システムのMode遷移等をtriggerとして発生するPIO。めったに発生せず、認識しにくいが、発生すると必ず危険な状態になる。(発生例: YF-22)
CAT.Ⅳ PIO by structural modes
構造部位との連成で発生するPIO。(発生例:YF-12 Black Bird)
出典:AIAA2004-6810, D. H. Klyde, “Recommended Practices for Exposing Pilot-Induced Oscillations or Tendencies in the Development Process”
PIOに関するレギュレーション
PIOに関するレギュレーションはPart23/25ともに、以下のような全般的な要求しかない。(25.143)
a)飛行機は、次の状態において安全な操縦及び運動ができなければならない。
a. 離陸
b. 上昇
c. 水平飛行
d. 降下
e. 着陸
b)すべての予想される運用状態において、特別な操縦技術、注意力又は操縦力を要することなく、かつ、制限荷重倍数を超えることなく、一つの飛行状態から他の任意の飛行状態へ円滑に移ることができなければならない(以下を含む)。
a. エンジン故障(臨界エンジンなど)
b. 減速装置の出入含む形態変更
AC25-7Dには、以下のような記述もあり、現在のレギュレーションにはPIOを完全に避けるための設計上の要求事項を定義できていない。
“運用実績などから、現代のPart25の航空機は、特定の操作条件下で飛行機とパイロットがカップリングする(PIO)可能性があり、25.143を満たさないことが指摘されている”